ダイナミス・ジャパンの通訳として  藤崎 智子

藤崎智子

ダイナミス・ジャパンの通訳として、2018年からスタートしたジェレミー先生の講義とライブケースのすべてにご一緒させて頂きました。また2020年から始まったジェレミー先生のオンライン特別講座の録画に通訳を入れる作業も担当しています。この貴重な経験を通じて、ホメオパシーを学ぶものとしてだけではなく、ひとりの人間としてジェレミー先生からたくさんの深い感動と多くの学びを頂いた事に深く感謝しています。

通訳は異なる言語の間を往復します。AIが進化した今、通訳・翻訳は「機械的な」作業へと置き換えが進むでしょう。しかし、ジェレミー先生の通訳をしていると、通訳が伝えるべき内容は、そのような左脳的な事柄だけではないと強く感じます。

ダイナミスの講義はジェレミー先生が36年の歴史を通じて練り上げてこられた内容ですから、その論理構成と講義手法は緻密にして包括的。また、先生は通訳を介したコミュニケーションに慣れておられるので、構文が全く異なる英語と日本語という二つの言語でありながら、通訳しやすいように話してくださいます。ですので、通訳作業の左脳的なニーズは完璧に満たしてくださいます。

しかし、ジェレミー先生からダイナミスの受講生に手渡されるのは「知識」や「ノウハウ」「言葉」の次元を超える、大きく、温かく、深く、時に繊細で、また時に力強く、そして清らかな愛情とエネルギーです。それは、ホメオパシー、人間存在、病を癒す事の真の意味、そして宇宙そのものに対して注がれる先生の愛情とエネルギーではないかと感じます。これこそがダイナミスで学ぶ事の大きな意義ですから、ジェレミー先生から降り注がれる愛情とエネルギーを「英語が苦手」というだけで受け取り損ねる人がいないように、と願いながら通訳をしています。

その意味で、私が最も緊張するのはジェレミー先生が受講生の前で実際に患者さんのセッションを行う「ライブケース」です。講義では〔先生-(通訳)-受講生〕というシンプルな関係性の構図が、ライブケースではグッと複雑になります。通訳は先生、クライアント、受講生の皆さんという三方向がやり取りする情報とエネルギーの効果的な仲立ちとならなければなりません。そして、その流れは正に「ライブ!」予測不可能の連続です!教室に入って来られるクライアントさんの様子を見て、先生が臨機応変に対応を変えられるところから始まり、先生の声のトーンやスピード、傾聴時と流れをコントロールする時の雰囲気の違い、などなど。これらは全て、目の前でジェレミー先生が実際にセッションを行っている様子を直接見て感じる事ができる、ダイナミス受講者にとって得難い貴重な学びの連続です。ダイナミスの醍醐味と言っても良いと思います。

ところで、これは完全に私見なのですが、「ジェレミー先生は、ホメオパシーにおけるレオナルド・ダ・ビンチなのではないか?」と思っています。それはジェレミー先生が素晴らしいホメオパス(ヒーラー)であるだけではなく、詩人であり、絵本作家でもあり、音楽家でもあり、哲学、神話、博物学など様々な分野の深い知識を持っているから・・・だけではありません。先生は、今まさにホメオパシーにおける2度目のルネサンスを始めようとされているように私には思えるからです。

ルネサンス/Renaissanceとは(re- 再び + naissance 誕生)即ち「再生」または「復活」を意味し、14世紀から16世紀のヨーロッパにおいて、キリスト教的価値観に支配され、文化的に停滞していた中世を脱して、古代ギリシアとローマの時代に立ち返り、人間性の復活を目指す文化運動として西欧各国に広まりました。ルネサンス期と言えば、まずはレオナルド・ダ・ビンチやミケランジェロなどによって芸術が大きく花開いたことを想起しますが、地動説を唱えたコペルニクスや、これを支持したガリレオ・ガリレイなど、近代科学が幕を開けた時代でもありました。

近代科学分野のひとつである医学において、18世紀後期にハーネマンが提唱し始まったホメオパシーの歴史は、19世紀にはヨーロッパ各国や米国に専門病院やホメオパシー医科大学が数多く存在するような黄金期を迎えました。しかしその後、影響力が大きく衰えた時期があったようです。実際、ジェレミー先生もイギリスでホメオパシーを勉強し始めた1980年頃には、学校も指導者も非常に限られており大変苦労されたそうです。

しかし、その後ジョージ・ヴィソルカス先生を始め、クラシカルホメオパシーの再興に尽くされた多くの先生方のお蔭で再びホメオパシーが花開く時を迎えました。これがホメオパシーにおける第一期ルネサンスだとすれば、ではなぜ今ジェレミー先生がホメオパシーの再生(即ちルネサンス)が必要だと考えておられる・・と私が感じるのか?

それは、ホメオパシーにおける第一期ルネサンスを経て「発展した」現在のホメオパシーの状況にジェレミー先生が大きな危機感を抱き、本来のクラシカルホメオパシーを復活、再生しなければならない!すなわち、再び「ルネサンス」が必要である。そして、その先頭に立つべきは自分だ!と自覚して活動しておられる・・と感じるからです。

第一期ルネサンスを経て多様な姿に発展し、再び多くのホメオパスが活動するようになった現在のクラシカルホメオパシーは、ホメオパス達の「より簡便にレメディを見つけたい!」というニーズに応えんがために、さまざまなシステムやツール、プロトコールを発明してきました。しかし、それは多くの場合ハーネマンやケントが教えるクラシカルホメオパシーから逸脱するものであり、患者さんにとっても、またホメオパシーにとっても大きなマイナスである、とジェレミー先生はお考えです。

では、「ダイナミスではホメオパシーを分かりやすく教えてくれないのか?」と言うと、全くそうではありません。ダイナミスではジェレミー先生の40年にわたる臨床経験と幅広い研究に基づいて、クラシカルホメオパシーの正しい理解と正しい使い方を、多角的に、実践的に、丁寧に学びます。緻密に丁寧に学ぶには3年かかるのでしょう。しかしその結果、いわゆる簡便なシステムやツールをいくら数多く知っていても及ばないような、正確で確固としたホメオパシーが身に付いていきます。これがジェレミー先生の目指すホメオパシーにおける第二期ルネサンスなのではないか?と私が感じるところです。「まず簡単に」ではなく、「正しく」。しかし、「正しい」が故に、結果的に「よりシンプルに、そして正確に」。

ですから、ダイナミスジャパンは、ダイナミックなホメオパシーの第二期ルネサンスの最前線で、ジェレミー先生の温かく大きな愛情とエネルギーのシャワーを浴びながら、確固とした古典に基づく正確なホメオパシーの理論と実践を、ライブケースという生の体験を通じて生き生きと学ぶ事ができる、たいへん貴重な場と言えるでしょう。この大切な学びの機会を言語の壁が決して邪魔しないよう、私も誠心誠意、通訳としてのお役目を務めてゆきたいと思います。

藤崎 智子